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デジタル遺品って何?〜スマホ世代が知っておくべき新しい遺品整理〜

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「デジタル遺品」という言葉、聞いたことはありますか?

これは、スマートフォンやパソコンが当たり前になった私たち世代が、いつか必ず直面する新しい遺品整理の課題です。

こんにちは、デジタルマーケター兼終活コンサルタントの佐藤ゆいです。
38歳、二人の子育てをしながら、日々「令和の時代に合った終活スタイル」について考えています。

実は私も、数年前までは「終活なんて、まだ先の話」と思っていました。
きっかけは、友人の父親が急逝したこと。
彼女が、お父様のスマホのロックを解除できず、大切な写真を取り出すことも、SNSで繋がっていたご友人に連絡することもできず、本当に困り果てていた姿を目の当たりにしたんです。

その時、ハッとしました。
これって、明日は我が身かもしれない。
従来の終活だけではカバーしきれない、私たち世代特有の問題があるんだ、と。

この記事は、単にデジタル遺品について解説するだけではありません。
私と同じ30代、40代の皆さんと一緒に、「未来の家族を困らせないために、今できること」を考えるための、最初の一歩です。
令和の終活スタイルとして、まずはこの「デジタル遺品」から一緒に学んでいきませんか?

関連リンク:デジタル遺品とは?概要と注意点についてわかりやすく解説

デジタル遺品とは?

デジタル遺品の定義と具体例

そもそも「デジタル遺品」って、具体的に何を指すのでしょうか?
難しく考える必要はありません。
一言でいうと、故人がパソコンやスマホの中に残したデータや、インターネット上で利用していたサービス全般のことです。

大きく分けると、2つの種類があります。

  • スマホやパソコンの中にあるもの(オフライン)
    • 写真や動画のデータ
    • 友人や知人の連絡先
    • メールの送受信履歴
    • 自分で作成した文書ファイルなど
  • インターネット上にあるもの(オンライン)
    • SNSのアカウント(Facebook, Instagram, Xなど)
    • ネット銀行やネット証券の口座
    • クラウド上のデータ(Googleフォト, iCloudなど)
    • オンラインショッピングのアカウント
    • 月額課金サービス(サブスクリプション)など

まるで、私たちの生活そのものが詰まっている感じがしますよね。
これらが、持ち主がいなくなった瞬間に「デジタル遺品」となるのです。

私たち世代に関係するデジタル遺品とは

特に私たち30代〜40代のスマホ世代にとって、デジタル遺品はとても身近な存在です。

例えば、子どもの成長記録をスマホで撮りためて、GoogleフォトやiCloudに自動でバックアップしている方は多いのではないでしょうか。
その膨大な写真データも、立派なデジタル遺品です。

他にも、日常的に使っているLINEやInstagramのアカウント、Amazonや楽天での買い物履歴、NetflixやSpotifyのようなサブスク契約。
これらすべてが、もしもの時には残された家族が向き合うことになるデジタル遺品なのです。

デジタル遺品が「問題」になる背景

では、なぜこのデジタル遺品が「問題」になるのでしょうか?
理由は大きく3つあります。

  1. 【見えない】:預金通帳や不動産の権利書と違って、物理的な形がありません。家族がその存在に気づくことすら難しいのです。
  2. 【入れない】:スマホのロック解除パスワードや、各サービスのID・パスワードが分からないと、誰も中身を見ることができません。これが最大の壁になります。
  3. 【止められない】:有料のサブスクリプションサービスなどは、本人が亡くなった後も自動で契約が更新され、料金が引き落とされ続けるケースがあります。

これらの特性があるために、残された家族が精神的にも金銭的にも大きな負担を強いられる可能性があるのです。

実際にあった!デジタル遺品のトラブル事例

「自分は大丈夫」と思っていても、トラブルは突然やってきます。
ここでは、実際に起こりがちなデジタル遺品のトラブル事例をご紹介しますね。

SNSアカウント放置で起きた混乱

もし、あなたのSNSアカウントが、あなたの知らないところで勝手に動き出したら…?

亡くなった後もSNSアカウントがそのまま放置され、乗っ取られてしまうケースがあります。
なりすまし投稿をされたり、友人・知人に不審なメッセージが送られたりして、残された家族が対応に追われるという混乱が起きてしまうのです。

自分の死後、友人たちにそんな迷惑をかけたくないですよね。
Facebookなど一部のSNSには、亡くなった後にアカウントを追悼モードにする設定もありますが、事前に手続きをしておかなければ意味がありません。

クラウド上の家族写真が消えた?

これは、子育て世代にとって最も胸が痛むケースかもしれません。

私の友人もそうでしたが、スマホのロックが解除できないと、バックアップ先のクラウドサービスにもログインできません。
そうなると、何年もかけて撮りためた子どもの成長記録や、家族旅行の思い出の写真が、二度と見られなくなってしまう可能性があります。

遺影に使う写真一枚すら見つけられない、という悲しい事態も実際に起きているのです。

ネット銀行・仮想通貨が相続できない?

最近は、店舗を持たないネット銀行やネット証券を利用している方も多いですよね。
これらは金銭的価値を持つ「デジタル遺産」とも呼ばれます。

しかし、IDやパスワードが分からなければ、家族はその口座にアクセスできません。
最悪の場合、口座の存在にすら気づかれず、大切な資産が誰にも相続されないまま眠り続けてしまうことも。
仮想通貨なども同様で、本人しか知らない情報が多いため、相続が非常に難しいのが現状です。

私の友人のケース:父の急逝とスマホのロック

冒頭でお話しした、私の友人のケースをもう少し詳しくお話しします。

彼女のお父様は、まだ60代で元気だったのですが、ある日突然、心筋梗塞で亡くなりました。
悲しみに暮れる間もなく、葬儀の準備が始まりました。
遺影に使う写真を探そうと、お父様のスマホを開こうとしたのですが、パスコードが分かりません。

思いつく番号を何度も試しましたが、ロックがかかってしまい、完全に開けなくなってしまいました。
結局、古いアルバムからなんとか写真を見つけ出したそうですが、「父が最近撮った、一番いい笑顔の写真を使ってあげたかった」と涙ぐんでいました。

さらに、お父様はSNSで趣味の仲間と繋がっていたようですが、そのアカウントにもログインできず、親しかった方々へ訃報を伝えることも難しかったそうです。
この話を聞いて、私はデジタル遺品対策の重要性を痛感しました。

今からできる!スマホ世代のためのデジタル終活

「大変なのは分かったけど、何から手をつければいいの?」と思いますよね。
大丈夫です。
完璧を目指さなくてOK
忙しい私たち世代でも、無理なくできることから始めてみましょう。

まずは「見える化」から始めよう:情報の棚卸し

最初のステップは、自分がどんなデジタル資産を持っているかを知ることです。
これを「情報の棚卸し」と呼びます。

  1. スマホのホーム画面を見てみる:どんなアプリを使っていますか?金融系、SNS、ショッピングなど、ジャンル分けしてみましょう。
  2. メールの受信箱をチェックする:サービスに登録すると「登録完了メール」や「お知らせ」が届いているはずです。「請求」「支払い完了」などで検索すると、契約中のサブスクが見つかることも。
  3. クレジットカードの明細を確認する:毎月引き落とされている項目があれば、それは契約中のサービスです。

まずはこれだけで十分。
自分が何と契約しているか、一覧にしてみるだけで大きな一歩です。

パスワード管理のコツとおすすめツール

たくさんのIDとパスワード、どうやって管理していますか?
「まさか、全部同じパスワード…?」なんてことは、セキュリティ上とても危険です。

そこでおすすめなのが、パスワード管理ツール(アプリ)の活用です。

管理方法メリットデメリット
パスワード管理ツール安全性が高い。自動で複雑なパスワードを生成してくれる。マスターパスワードを忘れると全て見られなくなる。
ノートに手書きデジタルが苦手な人でも簡単。紛失や盗難のリスクがある。
Excelなどで管理自分で自由に項目を作れる。ファイル自体のセキュリティ管理が必要。

ツールを使うにせよ、手書きのノートにせよ、一番大切なのは「その存在を信頼できる家族に伝えておくこと」です。

クラウド・SNSの整理術と活用方法

私も経験があるのですが、スマホで撮った子どもの写真、気づけばクラウドストレージがパンパンになっていませんか?
定期的な整理も、立派なデジタル終活です。

  • 不要な写真は削除する:連写した写真や、ブレている写真は思い切って消しましょう。
  • フォルダ分けをする:「2025年家族旅行」「長女運動会」のようにフォルダ分けしておくと、後から見返すときに便利です。
  • SNSの「追悼アカウント」設定:Facebookなどには、自分が亡くなった後にアカウントをどうするか、事前に設定できる機能があります。一度確認しておくのがおすすめです。

子育て中でもできる!無理しない整理習慣

「毎日忙しくて、そんな時間ないよ!」という声が聞こえてきそうです。
分かります、私も同じです。

だからこそ、「月に1回、給料日に5分だけ」のように、自分なりのルールを決めるのがおすすめです。
新しいサービスに登録したら、その都度リストに書き加える。
たったこれだけでも、数年後には大きな差になりますよ。

家族と一緒に進めるデジタル遺品対策

デジタル遺品対策は、一人で抱え込むものではありません。
大切な家族と一緒に、オープンに話せることが理想です。

配偶者や子どもと情報共有する方法

夫婦間でも、意外とお互いのデジタル事情を知らないものです。
「スマホのロック解除番号、お互いに知ってる?」
「ネット銀行の口座って持ってる?」
そんな簡単な会話からで大丈夫。

全てのパスワードを教えるのに抵抗があるなら、「パスワードをまとめたノートが、書斎のこの引き出しに入っているよ」と、保管場所だけを伝えておくだけでも、いざという時の安心感が全く違います。

地方の親世代との“デジタル格差”を埋めるには

私たちの親世代、60代や70代も、今や多くの方がスマホを使っています。
でも、私たちと同じ感覚で使えているとは限りません。

私も地方に住む両親に、オンライン手続きのやり方を電話で何度も教えた経験があります。
帰省した際に、「どんなアプリを使ってるの?」「困ってることはない?」と、スマホの中身を一緒に見ながら話を聞いてあげるだけでも、親孝行になりますし、親のデジタル遺品を把握するきっかけにもなります。

我が家の取り組み:LINEとNotionの使い方

参考までに、我が家の例をお話ししますね。
夫とは、お互いのスマホのロック解除番号を共有しています。
そして、銀行口座や保険、各種サービスのIDなどは、情報管理ツール「Notion」に一覧でまとめています。
そのNotionのページのURLだけを、夫婦のLINEグループのノートに貼ってあります。

こうしておけば、どちらかに何かあっても、LINEさえ見れば情報にたどり着ける、という仕組みです。
これが正解というわけではありませんが、一つの方法として参考にしてみてください。

万が一に備える「デジタル引き継ぎノート」の作り方

エンディングノートのデジタル版、「デジタル引き継ぎノート」を作っておくと、さらに安心です。
難しく考えず、以下の項目を書き出してみましょう。

  1. デジタル機器一覧:パソコン、スマホ、タブレットなど。ロック解除のパスワードも。
  2. 重要アカウント情報:GoogleやAppleのIDなど、様々なサービスに紐づいているもの。
  3. サービス一覧:SNS、ネット銀行、サブスクなど。ID/パスワードと、死後どうしてほしいか(解約、維持など)を記入。
  4. データの保管場所:写真や文書をどこに保存しているか。
  5. 伝えたいメッセージ

紙のノートでも、Excelでも、自分に合った方法で大丈夫です。

デジタル時代の終活ツールを活用しよう

今どきは、私たちのデジタル終活をサポートしてくれる便利なサービスがたくさんあります。

今どきの便利なサービスとアプリ紹介

終活と聞くと堅苦しいイメージですが、最近はスマホアプリで気軽に始められるものが増えています。
エンディングノートを作成できるアプリや、財産情報を記録できるアプリなど、無料で使えるものも多いので、一度試してみてはいかがでしょうか。

終活専門家が選ぶおすすめツールBest5

ここでは、私が実際に使ってみて「これは便利!」と感じたツールを厳選してご紹介します。

  1. 1Password(パスワード管理ツール):セキュリティが高く、家族と安全にパスワードを共有できる機能が便利です。
  2. Notion(情報管理ツール):自由度が高く、デジタル遺品リストだけでなく、あらゆる情報を一元管理できます。
  3. Googleフォト(写真管理):AIが自動で人物や場所を整理してくれて、検索も簡単。家族との共有も楽ちんです。
  4. わが家ノート(終活アプリ):三菱UFJ信託銀行が提供するアプリで、財産情報などを記録し、指定した家族に共有できます。
  5. Google無効なアカウント管理人:一定期間Googleアカウントへのアクセスがない場合に、指定した人に通知し、データを共有できる公式機能です。

オンラインで進める終活の始め方

「もっと詳しく知りたい」「専門家に相談したい」と思ったら、オンラインセミナーに参加してみるのもおすすめです。
私も定期的にオンラインでセミナーを開催していますが、全国どこからでも参加でき、同じような悩みを持つ同世代の方と情報交換できる良い機会になりますよ。

まとめ

デジタル遺品の問題は、もはや特別なものではなく、デジタル社会を生きる私たち全員に関わるテーマです。

最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • デジタル遺品とは、スマホの中のデータやネット上のアカウントのこと。
  • パスワードが分からないと、家族が思い出にも資産にもアクセスできなくなる。
  • 対策の第一歩は、自分が持つデジタル資産を「見える化」すること。
  • パスワード管理ツールや終活アプリなど、便利なサービスを活用しよう。
  • 完璧じゃなくて大丈夫。家族と情報を共有し、できることから少しずつ始めよう。

終活というと、少し重たいテーマに感じるかもしれません。
でも、デジタル遺品への備えは、暗いものでは決してありません。
それは、未来に残される大切な家族への「思いやり」であり、「愛情」です。

「私たち世代の終活」は、もっと自由で、やさしくていいはず。
この記事が、あなたが新しい一歩を踏み出すきっかけになれたら、とても嬉しいです。

一緒に、これからの終活を考えていきませんか?